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略歴・抄録|丹沢 秀樹

■抄録

歯周病を考慮した周術期口腔機能管理とその効果
Principles and effects of maingement of oral tissues, especially periodontium, during the openation period.

千葉大学大学院医学研究院 口腔科学講座 教授
丹沢 秀樹

 がん治療に伴う口腔合併症発症頻度が非常に高く、侵襲の大きい手術では局所合併症や肺炎が高頻度に出現するため、平成 24 年度改訂のがん対策推進基本計画では、「各種がん治療の副作用・合併症の予防や軽減」、「患者の更なる生活の質の向上」のために、「医科歯科連携による口腔ケアの推進」が盛り込まれた。これを受けて、平成 24 年度の診療報酬改訂において、「周術期における口腔機能の管理」が新設・保険導入された。以来、既に3回の診療報酬改定が行われ、その都度、対象疾患も拡充されてきた。今春(平成30年)の改定では、対象疾患が拡大されるとともに、「整形外科の人工関節手術」、「術後の脳外科患者」、「口腔内が不潔な患者」などにも適応が拡大されるなど、ますます医療の中で口腔機能管理の役割が期待されるようになってきている。さらに、慢性病態にも有効であることが認められ、介護や地域医療計画にも導入された。医療・介護における多職種連携がこれほど強く望まれたことはない。しかし、口腔機能管理の効果は予防効果であり治療効果ではなく、その効果は10~20%程度とささやかなものである。予防効果としては高いが、治療効果としては低い上に、様々な要因に影響されると本来の実力が発揮できない。実際、呼吸器学会の肺炎ガイドラインでは誤嚥性肺炎に関して口腔ケアの評価は低い。このような混乱は、ひとえに口腔機能管理に関して、あまり理解されていない実情による。医師、歯科医師、看護師、歯科衛生士、理学療法士、栄養士、介護士などが良く理解して、診断・評価に基づく管理・実施が適切に行われなければこの「ささやか」な効果を得ることはできない。本稿では、口腔機能管理に関して5つの課題を設定・解説する。さらに、口腔内の炎症や細菌の主な活動の場である歯周組織を苦慮した手術期口腔機能管理の診断・評価、管理計画の立案に関して、新しい試みと若干の考察をご紹介する。

課題1:定義・意義
・医療保険における口腔機能管理の位置づけ、口腔機能管理と口腔ケアの違い、口腔機能管理の具体的方法の例、介護保険における類似管理等。

課題2:対象疾患
・周術期口腔機能管理の保険導入時点における対象疾患・患者、診療報酬改定に伴い拡充されてきた経緯、特に、今春の改定で行われた拡充の重要な意義。
・医学的に対象患者を選別する方法として、疾患や部位ではなく、「患者の体力・予備能力」、「治療侵襲」、「病勢(病原性や疾患の進行度等)」などを考慮して、治療を妨げ、治癒を遷延する合併症の発生率を予測して判断する試み(紹介)。

課題3: 医学的・医療経済的効果
・在院日数、術後在院日数、術後絶食日数の短縮効果。
・抗菌薬の投与回数、投与日数、投与量の削減効果。
・術後合併症の抑制効果。
・医療削減効果、特に、投薬、注射、処置、検査、画像などの項目の支払額の大幅減少。

課題4:効果をもたらす原理
・周術期菌血症の原因としての口腔細菌の重要性。
・術後の誤嚥性肺炎発生率は10%以下であるので、口腔機能管理の効果を全て誤嚥性肺炎の予防効果で説明できない。
・口腔と連続性のない臓器でも口腔機能管理は効果があるので、局所感染予防だけでも説明できない。
・無菌飼育による小動物の寿命の延伸、抗生物質投与による家畜の早期肥満現象などから、動物が感染防止に使っている免疫エネルギーを節約すれば、その分、成長・肥満・創傷治癒促進などが起こると考察。
・以上より、口腔咽頭粘膜で多くの免疫にエネルギーが費やされていて、口腔機能管理によりこれを節約でき、結果、創傷治癒が促進され、合併症が少なくなると考察。

課題5:多職種連携の重要性
・私が多職種連携を非常に大切に思い、今後の医療・介護、地域医療に必須であると考えるに至った経緯のご紹介。
最後に、日本口腔科学会(日本医学会第31分科会)という100年以上前から「口腔の専門科・専門学会」として日本医学会に認められた学会の理事長として、「口腔内には多数の解剖学的器官や機能があり、それぞれに専門の学会・医療技術がある。免許・資格、学会が分れても、多くの職種・学会・診療科間のrespectに基づく相互理解と連携が必要である」ことを皆様にも、是非、ご理解いただきたく、お願い申し上げる。

■略歴

丹沢 秀樹

千葉大学大学院医学研究院口腔科学 教授
千葉大学医学部附属病院歯科・顎・口腔外科 科長
千葉大学大学院医学研究院 副研究院長

1982年
千葉大学医学部卒業
1986年
東京医科歯科大学歯学部卒業
1991年
千葉大学大学院医学研究課程修了
1997年~現在
千葉大学 教授

学術・歯科医療関係

1994~1995年
University of North Carolina(USA)留学 (Visiting Scholar)
1995~1998年
University of North Carolina(USA)Visiting Professor
2000年~現在
Oral Oncology誌 Editor
2008年~現在
Oral Oncology誌 Senior Adviser
2001年~現在
日本口腔顎顔面外傷学会理事
2006~2008年
日本口腔顎顔面外傷学会副理事長
2008年~現在
日本口腔腫瘍学会理事
20011年~現在
日本口腔腫瘍学会常務理事
2009年~現在
日本口腔科学会理事
2011~2014年
日本口腔科学会副理事長
2014年~現在
日本口腔科学会理事長
2015年~現在
日本口腔外科学会理事
2015年~現在
日本口腔内科学会理事
2003~2009年
千葉県歯科医療協議会会長
2010年~現在
千葉県歯口腔医療審議会会長
2005年~現在
厚生労働省医道審議会歯科分科会(研修関連部会等)委員
2008年~現在
最高裁判所任命 専門委員
2013年~現在
厚生労働省中央社会保険医療協議会専門委員
2011~2014年
内閣府日本学術会議連携会員
2014年~現在
内閣府日本学術会議会員
2012~2015年
日本学術振興会学術システム研究センター専門研究員

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