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略歴・抄録|西村 英紀

■抄録

歯周感染・炎症の全身への波及メカニズム
How do periodontal infection/inflammation systemically spread out?

九州大学歯学研究院口腔機能修復学講座歯周病学分野
Section of Periodontology, Division of Oral Rehabilitation, Kyushu University Faculty of Dental Science

西村 英紀
Fusanori Nishimura

本学術大会のテーマが『炎症と慢性疾患』であり、本セッションのテーマは『歯周組織の炎症が他臓器疾患におよぼす可能性』である。言うまでもなく、歯周炎は局所の感染症として発症し、炎症を惹起する。したがって、歯周炎が他臓器疾患におよぼす影響を正しく理解する上で、感染と炎症を明確に切り分けて理解することが重要である。
  感染が他の組織に波及すると考えた場合、その感染ルートが何なのか、どういった組織や臓器に感染が波及しやすいのか、どのような宿主状態で感染を受けやすいのか、などを正しく理解しなければならない。一般に、人工物(人工呼吸器、カテーテル、人工血管など)が生体内に存在するとき、その表面は排除機構が働かないためひとたび細菌感染が起ると菌は排除されにくい。また、細菌感染を受けやすい宿主は免疫力が低下した個体であり、いま最も問題になっているのが低栄養状態の高齢者ということになる。このような個体では誤嚥性肺炎が問題となる。誤嚥性肺炎の感染ルートは気道であるのでいわば生体の外側のルートであるが、昔からよく口腔感染の波及例として引き合いに出される細菌性心内膜炎のルートは血行を介しての感染であろう。よって感染ルートを断つという観点から言えば、前者では誤嚥を可能な限り予防することが重要であり、後者では菌血症をおこさない配慮が重要となる。とくに前述したように人工血管を埋め込んでいるような患者さんでは注意が必要である。
 これに対して炎症の波及についてはルートが必ずしも確立していない。炎症とは生体の恒常性維持のための反応(簡単に言うと防御機構)であるので、感染があれば必ず大なり小なり炎症は惹起されるが、そのマグニチュードは個々に異なる。波及のしやすさから言えば、炎症が増幅されやすい個体(すでに他の組織に何らかの炎症を抱えており免疫細胞が活性化されやすい個体)で、他の臓器に波及すると考えられる。局所の炎症が増幅されやすい個体の代表が過剰栄養状態に置かれた個体である。過剰栄養に置かれた個体では、脂肪組織が成熟しそこに浸潤した免疫細胞との相互作用で、脂肪組織が一種の炎症状態にあると考えられるようになったため、免疫細胞が活性化されやすい。メタボリックシンドロームにおける血管病変の進行はこの機序で血管壁の炎症が促進されるものと理解されている。このような個体では歯周炎症も増幅されやすい。一方で他の組織の炎症反応があまりにも強すぎて急性炎症レベルにまで達すると、歯周病による軽微な慢性炎症の影響は完全にマスクされる。したがって、炎症の波及の観点から考えると歯周炎症の影響は非常にデリケートなものであると理解する必要がある。
 以上の概念に基づいて、ここでは歯周炎の他臓器への波及を3人の先生方に講演いただき、歯周感染/炎症が他臓器に及ぼす可能性について討論したいと考えている。

■略歴

西村 英紀

昭和60年3月27日
九州大学歯学部卒業
昭和63年4月1日
岡山大学歯学部助手
平成2年4月1日
米国コロンビア大学歯学部留学
平成7年2月1日
岡山大学歯学部助手
平成9年2月1日
岡山大学歯学部附属病院講師
平成14年4月1日
岡山大学大学院医歯学総合研究科助教授
平成18年9月1日
広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授
平成20年4月1日
広島大学歯学部学部長補佐(国際交流担当)
平成21年4月1日
広島大学病院病院長補佐(歯科感染担当)
平成21年4月1日
広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻長
平成22年4月1日
広島大学歯学部歯学科長
平成23年4月1日
広島大学病院副病院長
平成24年4月1日
広島大学大学院医歯薬保健学研究院副研究院長
平成25年4月1日
九州大学大学院歯学研究院教授
平成26年4月1日
九州大学歯学研究院研究院長補佐(国際交流担当)
平成27年4月1日
九州大学歯学研究院副研究院長

賞罰

平成11年5月14日
日本歯科保存学会奨励賞
平成11年6月22日
The First Award in Basic Research Category of 7Th Meeting of The International Academy of Periodontology
平成17年9月22日
日本歯周病学会学術賞

所属学会および役職

日本歯周病学会(専門医・指導医、常任理事)、日本歯科保存学会(指導医、理事)、日本糖尿病学会、International Association for Dental Research、日本糖尿病合併症学会(評議員)、病態栄養学会(学術評議員)

Editorial Board

2002-2004
Editorial Board member (Journal of Dental Research)

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