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略歴・抄録|高田 隆

■抄録

慢性歯性感染症と全身の健康
- P. gingivalisの歯性感染と非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)-
Chronic Dental Infection and Systemic Health Condition
- Dental infection of Porphyromonas gingivalis and non-alcoholic steatohepatitis (NASH) -

広島大学 学術院(医歯薬保健学研究科)
口腔顎顔面病理病態学
高田 隆

 近年、慢性歯性感染とりわけ歯周炎と2型糖尿病、心血管系疾患、早産・低体重児出産、リウマチ性関節炎など様々な疾患との関係(oral-systemic disease connection)が、そのメカニズムを含めて明らかにされつつある。
 非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis; NASH)はアルコール性肝障害に類似した進展を示すにもかかわらず、アルコールの過剰摂取とは関係なく肝臓に脂肪が蓄積することで生じる肝炎である。メタボリック症候群の肝臓における表現型と考えられ、肝硬変、肝癌に進展することが指摘されており、近年のメタボリックシンドロームの増加に伴ってNASHへの注目が高まっている。我が国では約200万人がNASHに罹患し、そのうち約20万人が肝硬変に移行することが示されているが、NASHの発生、進展のメカニズムは未だ十分に明らかにされていない。
 最近、NASHの発生に腸内細菌の関与が指摘され、腸内細菌の除菌がNASHの病態改善に有効であるとの報告がされた。そこで、我々は、oral-systemic disease connectionの観点から、NASHの発生と進展に慢性歯性感染が影響を及ぼすかどうかについて検討してきた。まず、マウスの臼歯からP. gingivalisを感染させ、普通食群及び高脂肪食群における肝臓の変化をP. gingivalis感染群と非感染群で比較した。その結果、高脂肪食群で脂肪肝が誘導され、P. gingivalisの歯性感染によって脂肪化が促進されるとともに肝臓の線維化が誘導されることを明らかにした。次に、NASHに罹患した300名の患者から得られた肝生検材料におけるP. gingivalisの存在を免疫組織学的に検索したところ、約4割の症例にP. gingivalisが認められ、P. gingivalis陽性例では陰性例に比較して病態が進行する傾向を示すことを明らかにした。このように、P. gingivalisの歯性感染はNASHのリスクファクターであることを示唆する所見が得られた。講演ではP. gingivalis歯性感染がNASHの発生や進行に関与するメカニズム解析に関する研究結果を供覧するとともに、NASH患者におけるP. gingivalisを標的とした診断や歯科的介入の意義について提案したい。

■略歴

原 宜興

1978年
広島大学歯学部卒業
1982年
広島大学大学院修了(歯学博士),広島大学歯学部助手
1984年
広島大学歯学部附属病院講師
1985-86年
ハンブルク大学病理学研究所客員講師
1993年
広島大学歯学部助教授
1995-96年
ミシガン大学歯学部客員准教授
2001年
広島大学歯学部教授、広島大学大学院教授
2008年
広島大学歯学部長
2015年
広島大学理事、副学長 現在に至る

客員教授

2010年
パレルモ大学(イタリア)、台北医科大学(台湾)
2011年
ホーチミン市医科薬科大学(ベトナム)
2012年
アイルランガ大学(インドネシア)
2014年
ヤンゴン歯科医学大学(ミャンマー)
2015年
桂林医学院(中国)、マラヤ大学(マレーシア)

受賞

1999年
唾液腺学会奨励賞
2003年
歯科基礎医学会ライオン学術賞
2012年
広島大学長表彰
2017年
歯科医学会会長賞
2018年
IADR Distinguished Scientist Award

学会活動

国際口腔病理学会会長(2012−14年)
アジア口腔病理学会会長 (2010-13年)
日本臨床口腔病理学会理事長(2008-12年)
JADR国際歯科研究学会日本支部会長(2015-16年)
IADR国際歯科研究学会アジア太平洋地域会長(2014-16年)
歯科基礎医学会(副理事長2012~16年)
広島大学歯学会(会長 2008-12年)

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