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略歴・抄録|原 宜興

■抄録

口腔から全身への炎症波及のメカニズム
Mechanism how oral inflammation spreads throughout the whole body

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科・歯周病学分野
Department of Periodontology
Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences

原 宜興
Yoshitaka Hara

 歯周炎の原因は細菌であり、それに対する生体防御系の反応とともに歯周炎が発症・進行するというコンセプトが明確になって、ほぼ半世紀が経過した。また歯周炎と全身疾患との関連を認識して、20年が経過する。歯周炎に罹患した患者ではさまざまな全身疾患の発症率が高くなる。口腔内にはそもそもプラーク細菌が多数存在しており、その上に歯周炎によって歯周ポケットが形成されれば、ポケット内で増加した細菌を加えた総細菌数は健常人より相当多くなる。その状態ならば、細菌の影響で全身疾患が誘導されても不思議ではないだろう。しかし、現実にどのような経路や機序で口腔から全身に細菌の影響が及ぶのであろうか。
 口腔から全身に細菌が影響を及ぼす機序に関しては、細菌本体の血行性の伝播がまず考えやすい。歯周炎病巣では歯肉は易出血性となっており、これは臨床的にBoPとして捉えられる。歯周ポケット内のプラーク細菌が血中に侵入することは十分起こりうる。事実、スケーリングなどの歯科処置で菌血症が起こる場合があるという報告があり、ブラッシングやガムを噛むことでもごく短時間ではあるが、菌血症になるという。しかし、細菌から放出されるサイズのより小さい物質が、血中に侵入したのち全身臓器に移行することは、細菌体そのものの侵入よりもさらに容易であろう。細菌が産生する起炎物質あるいは抗原物質、例えば歯周病原性細菌などグラム陰性菌が放出するLPS(内毒素)などはおそらく最重要な物質である。過去の研究でも、歯肉溝から抗原物質が領域リンパ節に到達して、形質細胞の抗体産生を誘導することが証明されている。さらに炎症や外傷性咬合などにより、歯肉結合組織におけるコラーゲン線維、特に結合組織性付着部が破壊されると、抗原物質の組織内への侵入が容易になることが、ラットでの実験的歯周炎の研究で明らかとなった。
 今回の歯科医師セッションでは、講師お二人による口腔から全身という視点での、「歯周炎とNASH」および「歯周炎と糖尿病」に関するご講演の序として、口腔から全身に細菌が影響を及ぼす機序に関して話させていただこうと思う。

■略歴

原 宜興

昭和53年3月
九州大学歯学部 卒業
昭和57年3月
九州大学大学院歯学研究科入学(口腔病理学専攻) 修了
昭和57年4月
九州大学歯学部附属病院医員(第一保存科)
昭和57年11月
同上  助手
昭和60年8月
同上  講師
平成元年4月
長崎大学歯学部歯科保存学第二講座助教授
平成12年11月
同上  教授
平成14年4月
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 歯周病学分野教授
平成30年
現在に至る

資格

歯学博士
日本歯周病学会専門医・指導医
日本歯科保存学会専門医・指導医

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